この材料は「変態点(へんたいてん)」という、金属を作っている材料の原子の並び方がかわる温度があり、
それより温度が高いときと低いときで大きく性質が変化します。
変態点より低いときはやわらかい並び方(マルテンサイト)に、
変態点より高いときはかたい並び方(オーステナイト)へ並び方を変化させます。
その他の金属と違って、並び方が変わっても原子のつながりは切れません。
上の動画の材料は変態点が60℃程度なので、室温ではやわらかい並び方になって、広げたると広がったままになり、
お湯につけるとかたい並び方になり、元の形に戻ります。
※TiNi形状記憶合金には4つの変態点があります。
As:マルテンサイトからオーステナイトにかわり始める温度
Af:マルテンサイトがオーステナイトに完全にかわり終わる温度
Ms:オーステナイトからマルテンサイトにかわり始める温度
Mf:オーステナイトがマルテンサイトに完全にかわり終わる温度
形状記憶合金は温度だけでなく、力によっても原子の並び方を変えることができます。
たとえば変態点が5℃の材料は、室温下では充分あたためられたことになり、
かたい並び方になっています。
その状態にどんどん力を加えていくと、途中(降伏点)から
原子の並び方をかたい並び方からやわらかい並び方に変化させます。
そのとき、熱を発生しながら一定の力でどんどん形を変えていきます。
原子が全てやわらかい並び方に変化しても力をかけ続けると原子のつながりが切れ元の形に戻らなくなるが、
そうなる前に力を抜けば原子がやわらかい並び方からかたい並び方へ変わり、元の形まで戻ります。
そのときは逆に熱を吸収しながら戻ります。
この性質を「超弾性(ちょうだんせい)」と言い、バネに使っているステンレスの10倍まで耐えられます。
形状記憶合金は「形状記憶特性」と「超弾性」という2つのおもしろい特徴があります。
簡単に言うと「あたためると元の形に戻る」性質と、「大きく曲げても元の形に戻る」性質で、
全然ちがう性質に思えるけど、
どちらも原子の並び方が変わる事によって起きていて、
それを熱を加えて起こすか、力を加えて起こすかの違いだけです。
ちなみに吉見製作所で扱っている形状記憶合金はチタンとニッケルの合金で、
変態点は0℃くらいから80℃くらいまでのあいだで調整する事ができます。
⚫
「金属間化合物」というセラミックスの仲間です。
原子同士が強固に結びついており、安定した材料なので耐食性、耐摩耗性に優れます。
また、生体適合性が良く、アレルギーなどが起こりにくい材料です。
⚫
Fe系、Cu系の形状記憶合金と比較して繰り返し特性が良く、温度変化に敏感で、利用可能な歪み変形量が大きいです。
⚫
しなやかに大きく曲がりますが、折れるときは急にぽきっと折れます。
⚫
溶接、はんだ付けなどが難しい材料です。
⚫
原材料に加え、加工にコストのかかる材料です。